20260116

共生コミュニケーターへの第一歩―「やさしい日本語」公開授業レポート

共生コミュニケーター専攻では、公開授業シリーズ「多様な人びとをつなぐ共生コミュニケーターの役割」を開催しています。今回レポートするのは、2026年1月8日にその第2回として行われた「やさしい日本語」講座です。講師には、一般社団法人やさしい日本語普及連絡会代表理事の吉開章さんをお迎えし、共生社会をつくるために欠かせない、言葉のバリアフリーについて学びました。

「共生コミュニケーター」とは、言語が不自由な人、多様なルーツをもつ人、障がいのある人、お年寄りなど、さまざまな背景を持つ人々の間に立ち、スムーズなコミュニケーションを支える専門家のことです。その活動に欠かせないのが「やさしい日本語」です。これは、「日本語が母語ではない人など、日本語の理解やコミュニケーションに何らかの困難を抱えている人のために配慮された日本語表現」(吉開2020)を指します。

「外国の人との会話なら英語が必要では?」と思うかもしれません。しかし、入管庁の調査では、日本に住む外国人の約97%が「少しなら日本語で会話ができる」と答えています。実は、英語よりも日本語でコミュニケーションできる可能性の方が圧倒的に高いのです。難しい文章では理解しにくい人でも、やさしい日本語に言い換えるだけで、約77%の人が「よくわかった」と答えるというデータもあります。

この「やさしい日本語」が役立つ相手は、外国の人だけではありません。ここに共生コミュニケーターという職業の面白さがあります。例えば、手話を母語とするろう者の人たちにとって、日本語は「第二言語」のような存在です。また、視覚や聴覚に障害がある人、認知症のお年寄りにとっても、要点を絞った「やさしい日本語」は非常に有効なコミュニケーション手段になります。相手の立場に立って言葉を整理することは、あらゆる壁を越える力になるのです。

授業では、これらのことをやさしい日本語ラップ「やさしいせかい」を読み解きながら学びを深めました。
また、楽しく技術を身につけるトレーニング「やさ日3文クッキング」も紹介され、「はさみの法則(はっきり、さいごまで、みじかく)」を意識しながらキーワードを3つの短い文で説明する、実践的なワークに挑戦しました。単に言葉を簡単にするということではなく、相手に寄り添う気持ちを持つこと、伝えたいことの「本質」を捉える難しさを体験しました。


現在、共生コミュニケーターが活躍する場はますます広がっています。市役所での外国人支援、病院や福祉の現場での通訳、学校での多文化共生、さらには企業のダイバーシティ推進など、あらゆる場所でその専門性が求められています。やさしい日本語を活用することで、誰もが情報を受け取り、会話の輪に入ることができる社会を作る――そんな「やさしい世界」を支える第一歩を、この授業を通じて実感することができました。

引用文献:吉開章(2020)『入門・やさしい日本語』アスク出版

心理コミュニケーション学科 准教授 工藤 理恵

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