20250609

5月24日(土)、緑園キャンパスで「フェリス女学院大学の留学生や外国ルーツの学生と話してみよう&《やさしい日本語》ワークショップを実施しました。以下はそのレポートです。
この活動は、「多様なルーツを持つ人たちが暮らしやすい神奈川とは」をテーマとする英理女子学院高等学校探究プログラムの3回目です。プログラムの趣旨は、以下の3点です。
- 神奈川(あるいは横浜)に暮らしている、多様な国籍・ルーツを持つ人たちを単に「外国人」「外国人労働者」としてその人たちを考えるのではなく、同じ地域にともに暮らす「隣人」「市民」「仲間」として向き合うこと。
- その人たちの暮らしやすさを実現する上で、すでに地域の中で行われている取り組みとその課題について、高校生の視点から探究すること。
- 国際交流ラウンジの見学や、フェリス女学院大学留学生や外国ルーツ学生との交流なども交え、体験を通して「多文化共生」を自分事として考えられるようにすることです。
英理女子学院から3名、静岡大学グローバル共創科学部から8名をお迎えし、フェリス生13名(うち留学生9名)と、それぞれ所属や出身の異なる学生・生徒が交流しました。
高校生3名から、前回(5月10日)の港北国際交流ラウンジでのフィールドワークの振り返り報告があり、初対面の大学生たちを前にした堂々としたコメントに、頼もしさとこれから始まるワークショップへの期待が高まりました。
アイスブレイクは「自分が苦手なこと、苦手だけれど克服したいと思っていること」をトピックに、それぞれ所属や出身の異なる学生・生徒が4グループに分かれて取り組みました。「苦手なこと」を話題にすると、相手の人となりも見え、お互いに緊張がほぐれるようで、導入にはとてもいいキーワードのように感じました。
続いて心理コミュニケーション学科共生コミュニケーター専攻の高橋誠一准教授の《やさしい日本語》講義は、普段から取り入れたいと感じる気づきや、外国人留学生へのサポート経験などから、確かにあるあると頷けることばかりでした。具体的には次のような点です。
- 在留外国人から期待されている「情報発信の言語」は、母語以外では「日本語」や「やさしい日本語」である。英語を母語としない人にとって、英語のニーズはそれほど高くない。
- 「やさしい日本語」は、外国人に覚えてほしいものではなく、日本人が使えるようになってほしいもの。
- 相手が外国人かどうかにかかわらず、普段から相手に伝わるコミュニケーションをトレーニングしておく必要がある。
- 実践のポイントとしては、漢語ではなく和語にする、曖昧な表現は使わない、一文を短くする、固有名や重要な用語は言い換えずにそのまま使う。
- ピクトグラムは有効だが、前提となる知識が異なる場合、絵だけでは伝わらないこともある。
- 日本語の習熟度や敬語への価値観は人によって違うので、最初は敬語で話してみて、伝わらなかったら敬語をやめてみる、など柔軟な対応を。
- 相手の理解度を確認するために、「明日は何時に来ますか」など具体的な問いかけをしてみることも有効。
- 対面で説明を受けた場ではわかっていても、時間が経つとわからなくなってしまうことも多い。大事なことはメモを書いて渡すとよい。
講義の後はすぐ実践です。災害時の避難所運営を想定して、避難生活のルール(サンプル)を《やさしい日本語》に書き換えるワークに取り組みました。役割分担をするのではなく、一人ひとりが考えて作業することを前提に、各グループは、「情報の整理」や「あたりまえを疑う視点」など、講義で学んだ知識をさっそく活かして忙しく手を動かしていました。「外国人の子ども」「母親の立場」「ひとりで来日した人」など、具体的な立場に置き換えて考えることで、自分とは違う視点から物事を見る=「あたりまえを疑う視点」に近づけた気がしました。
高校生対象の探究プログラムに、大学生、留学生が参加するケースはこれが初めてとのことで、引率の先生からはとても充実していると感謝のお言葉をいただきました。
このプログラムは、6月7日(土)発表に向けた準備、6月21日(土)最終発表会と続きます。
主催した共生コミュニケーター専攻・小ヶ谷千穂教授からは、文献やインターネットによる調査だけでなく、夏休み中には行きやすい場所でよいので多文化共生の現場に足を運んでほしい。そうすることによって自分だけの経験、独自のアイデアを持つことができるようになる、とアドバイスがあり、締めくくられました。



