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“よみもの”

20220928

社会を生き抜く力をつける、全学部学科横断型の「副専攻制度」とは

フェリス女学院大学では、2023年度から全学部学科横断型の「副専攻制度」を導入します。専門知識を深める学部学科の学びに加えて、新たな視野を育む3つの「副専攻」を設置。これからの時代を生き抜くために欠かせない、実践的なスキルの獲得を目指します。リベラル・アーツ教育を体現する新たな制度の内容と、そこに込められた想いについて、荒井真学長、梅﨑 透教授、小ヶ谷千穂教授の3名にお話を伺いました。

学びの道標を示すことで、学生の成長を可視化

副専攻制度は、学生が所属する学部学科の主専攻に加えて、他学部・他学科の科目まで範囲を広げて、特定のテーマについて学べる制度です。フェリス女学院大学にはもともと他学部・他学科の科目を自由に履修できる「開放科目」制度がありました。しかし、従来の仕組みでは「どの科目をとるべきか」が示されておらず、また、複数の科目を組み合わせることで身に付くスキルが不明瞭だという課題があったのです。新たに導入する副専攻制度では、「ジェンダーとキャリア」「デザインと表現」「データサイエンス」の3つの副専攻を設置し、体系化したカリキュラムを構成することで、各領域の学びがもたらす成長を可視化。学生たちは筋道を立てて学びを深められるようになると先生方は話します。

小ヶ谷「科目を系統立てて配置することで、学生に学びの成果を示すというのが、3つの副専攻に共通する目的ですね」

さらに、副専攻修了者には「修了証」を発行。副専攻の履修によって得た成果を証明し、就職活動に役立ててもらうことを目指します。副専攻の学びを通じて育まれる実践的なスキルは、社会の至る場所で活用が見込めるので、学生がキャリアを考える上でも大きな助けになるはずです。

梅崎「これまでもデータサイエンスやジェンダー、デザインを学ぶ科目はありました。しかし、専門知識を修得することがゴールになっていて、得られた知見やスキルを社会でどう実践するかという観点からはもう少しわかりやすいものが必要でした。3つの専攻は、フェリスの教育の特長を生かしながら、社会のニーズに応える学びとして設定されています」

荒井「副専攻制度では、より実践的な科目を配置しています。各学部学科で取り組む主専攻の学びと組み合わせることで成長の幅が広がり、人生を豊かに生きていくためのスキルが身に付きます」

ジェンダーの視点から、自分と他者の生き方を考える「ジェンダーとキャリア」

副専攻制度は3つの領域によって構成されており、学生一人ひとりが自身の目的に合った専攻を学ぶことで、総合的な知識・スキルを修得できます。「ジェンダーとキャリア」では、①ジェンダースタディーズコースと、さらに深く学びたい学生のために②ジェンダーキャリアコースを設置。女子大ならではの観点から、ジェンダーについての独自の視点を育むとともに、社会で活躍する先輩方の姿を通して自身のキャリアを考えるという、2段構えの構成になっています。

小ヶ谷「ジェンダーに対する視点を養うには、セクシュアリティや政治、男性学など、幅広い領域を学ばなくてはなりません。まずは本学のジェンダー教育の在り方を理解してもらうために、ジェンダースタディーズコースでオムニバス形式の授業を実施し、系統立てて学問への理解を深めていきます。 ジェンダーキャリアコースでは、個性を生かしてキャリアを築く卒業生や地域で活躍する女性リーダーによる講演、プロジェクト科目の一環として行うインターンシップなどに参加できます。それぞれの仕事観や実際の職場を知ることで、自分自身の進路をより明確に考えられるようになるはずです。女性に限らず、多様な人々のライフスタイルを学ぶ経験は、人事の仕事などで大いに生かせるのではないでしょうか」

多彩な表現手段に触れ、感性を伸ばす「デザインと表現」

「デザインと表現」は、音楽学部を有するフェリス女学院大学ならではの専攻です。まずはベース科目によってさまざまな文化表現の基礎を学び、さらに「ファッション、スペース」「メディア、プロダクト」「グラフィック、エディトリアル」「コミュニケーション、ビジネス」「サウンド、ビジュアル」の5つのエリアに分かれて各々の興味関心を追究します。美術史、建築史、デザイン史といった一般的な科目も設置。感性と論理力を鍛えることで、実社会で役立つ確かなスキルが身に付きます。

梅崎「実は、副専攻フライヤーのデザインには、学生たちのアイデアが反映されています。現代の若者は十分素晴らしい感性を持っているので、多彩な表現手段の知識を深めることで、より一層才能を伸ばしてほしいですね。

また、国際交流学部で学べる、ファッションから見るフランス史の授業や、音楽学部で体験できる3Dプリンタを利用した楽器制作など、各学部の特徴的な講義を副専攻として履修可能です。これまで触れられなかった他学部の学びを経験することで、人生がより豊かになるはず。きっとこれから、学生に人気の専攻になると思います」

段階的な学習で、実践的なスキルと思考力を養う「データサイエンス」

あらゆる領域でデータの利活用が進む現代。フェリス女学院大学では、文部科学省による大学でのデータサイエンス教育課程を参照し、フェリスらしさを加えた「基礎」「応用」「開発」の3段階で学びを展開。「基礎」で情報リテラシーやAIに関する初歩的な知識を修得し、仕組みを理解しながら数理的思考や実践的なスキルを磨く、積み重ね型のプログラムとなっています。

荒井「IT人材へのニーズは今後さらに高まり、2030年には約40万人もの人材不足が起こると言われています。これから本学でもIT業界への就職を考える学生が増えると思いますが、企業内には顧客対応やプログラミングなど幅広い業種が存在するため、どんな場面でも対応できるよう基礎を身に付けておくことが重要です」

梅崎「急激な進化を遂げているAIですが、発信する情報のすべてが正しいとは限りません。AIが機械学習を行う際、取り込むデータに特定の社会背景がいつのまにか反映され、出力結果にバイアスが生まれてしまうことも。学生の皆さんには、膨大な情報の背景まで見通せる思考力をデータサイエンスの授業で養ってほしいと思います」

“教育者”の立場から考える、新たな制度への期待と意気込み

複数の学部学科にまたがる副専攻制度。異なる分野の交わりによって一人ひとりの学びの可能性が広がることはもちろん、教育・研究の深化によって、大学全体の教育の質の向上が期待できます。

梅崎「研究の幅が広がり、分析力も深まります。4年生で学生たちは卒業論文を書きますが、今までにない新しい発想が生まれるかもしれません」

また、副専攻制度の設置は各科目を担当する教員のつながりを深め、教育者としての意識の向上にも効果を発揮しています。

小ヶ谷「新しいカリキュラムを考える中で教員同士のチームワークが高まり、教える立場としてのモチベーションにつながっています。今後は、学びの専門性を深めながらどう社会に接続していくか、大学が果たす社会的役割を改めて考えていきたいです」

荒井「まずは我々がワクワクしながら、これからの学びを考えることが大切ですね」

従来の学びを生かしながら、柔軟に社会のニーズに応える教育を提供する

フェリス女学院大学の根幹にある「リベラル・アーツ教育」を、新たな形で体現した副専攻制度。主専攻で得られる深い学びと、特定領域の幅広い知見を養う副専攻の学びを組み合わせることで、フェリス独自の教育の魅力が浮かび上がってきます。

荒井「本学には多様な学びや資源があります。しかし、従来はそのポテンシャルが各学部・学科の中でしか発揮されておらず、全学生に参加してもらうことが難しい状況でした。分野を超えて総合的にスキルを磨く副専攻制度を通して、フェリスの原点となるリベラル・アーツ教育の楽しさを実感してもらえると嬉しいです」

小ヶ谷「社会で役立つスキルを育むとともに、時代をリードし続けるフェリスの教育の魅力を再発見してもらいたいですね」 

副専攻制度は学生からのニーズが高い3つの専攻を柱として始まりますが、これからも学部学科の学びや社会状況の変化に合わせて、柔軟にアップデートしていきます。最も時代にふさわしい学びとはどんなものなのか―学生・教員がアイデアを出し合うフェリスらしいスタイルで、これからも進んで行きます。

梅崎「副専攻制度はさまざまなことにチャレンジする機会を学生に提供します。教育内容はこれからも綿密に検討し、発展させていきますので、ぜひ活用して学びの楽しさを実感してください」

<取材対象者>

荒井 真
ARAI, Makoto
国際交流学部教授として、比較法・ヨーロッパ法史・ヨーロッパ大学史について研究。世界のさまざまな法秩序とそれを担う法律家の特徴を比較し、それぞれの背景にある歴史や社会的背景について考察してきた。2020年4月よりフェリス女学院大学学長。

梅﨑 透
UMEZAKI, Toru
文学部英語英米文学科教授。アメリカ史・歴史学を専門とし、20世紀アメリカの知の変遷を政治・文化運動に注目して研究。特に、1960年代の若者による運動が社会と結びつきながら展開していく様子について探究している。2020年4月より全学教育担当副学長。

小ヶ谷 千穂
OGAYA, Chiho
文学部コミュニケーション学科教授。多文化共生、国際社会学、国際移動論を専門とし、主に家事労働者として国外に働きに行くフィリピン人女性たちの組織活動や、出身家族との関係について研究。フィリピンの大学生や、日比国際児と呼ばれる若者たちと日本人学生との交流活動にも取り組む。2021年4月より教務部長。

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