01from ferris to you
“おたより”
20220302
2011年に公開されたジブリ映画に、『コクリコ坂から』という作品があります。60年代の日本の高校を舞台とした青春物語ですが、「韓国現代史」に関連する描写があることはあまり知られていません。
主人公は海辺に建つ下宿を切り盛りする女子高生の松崎海(あだ名はメル)です。メルは毎朝、 “航海の安全を祈る”旗を庭に掲げることを日課としています。それは海で亡くなった父親をしのぶためのものでした。
彼女が通う高校の部室棟「カルチェラタン」は、老朽化のため取り壊しの対象となります。生徒たちは自分たちの居場所を守ろうと奮闘しますが、取り壊しの方針は変わりませんでした。
そこで、メルらが学園の理事長に直談判に行くのですが、その際に次のような会話が交わされます。
理事長「お父さんのお仕事は?」
メル「船乗りでした。船長をしていて朝鮮戦争のときに死にました。」
理事長「LST(戦車揚陸艦)……」
メル「はい。」
この会話と並行してLST が爆発するシーンが流れ、父親が朝鮮戦争で戦死したことが暗示されます。
しかし、新憲法下の日本において、一般人が他国の戦争に動員されることなどあるのでしょうか。実は朝鮮戦争では、多くの日本人が秘密裏に海上の機雷除去や輸送に従事していました。軍人ではない一般の日本人が、韓国を守るために働き、そして命を落としたのです。日韓間の歴史は対立ばかりが注目されますが、少し視野を広げるとまったく異なる関係が見えてきます。
国際交流学部国際交流学科准教授 新城道彦
※使用している画像は、ジブリが公開しているフリーのものです。
https://www.ghibli.jp/info/013344/