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“おたより”

20220107

国際交流学部で学ぶ地域文化② ドイツの街角と場所の記憶

思想文化論と現代思想論では、おもに20世紀以降のヨーロッパの思想や文化を論じています。2021年度は、シモーヌ・ヴェイユ 、ヴァルター・ベンヤミン、ハンナ・アーレントを取り上げました。人間の共生のあり方を根底から破壊する、戦争や大量殺戮に直面した表現者たちです。

授業では、表現者たちの仕事に関連する場所の記憶を紹介することがあります。写真は、ドイツの環境都市として知られるフライブルクの、大学の近くにあるアパートです。ハンナ・アーレントは学生時代にここに住んだことがありました。1926年頃のことです。

数年前、私はこの場所を訪れました。するとその建物の前には、「躓きの石」と呼ばれている、現代ドイツの想起の文化を象徴するプレートがありました。ドイツ語で、「ここにエルザ・オスターが住んでいた。1915年生まれ。1939年にオランダに避難。強制移送され、1942年11月2日にアウシュヴィッツで殺害された」と刻まれています。もしかするとハンナは、このエルザさんと顔見知りであったかもしれません。

ドイツの街角では、こうしたプレートをよく見かけます。ナチス時代に強制収容所に送られた人々が住んでいた住居の前の道路に、このような真鍮製のプレートが埋め込まれているのです。過去の過ちを繰り返さないために、市民たちが始めたプロジェクトでした。

 国際交流学部国際交流学科教授 矢野久美子

強制収容所に送られた人がいた住居を示すプレート
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