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“おたより”

20211210

CLAコア科目授業 みすず書房社長講演会「ホロコーストと出版」

CLAコア科目の授業「市民活動の役割と意義――戦争・記憶・市民」では、11月16日にみすず書房社長の守田省吾氏をゲストスピーカーにお迎えし、「ホロコーストと出版」についての講演会を開催しました。講演会は図書館ラーニングコモンズで行い、授業以外の学生や教職員にも公開しました。

みすず書房からは、ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録』(霜山徳爾訳、1956年)が、世界に先駆けて出版されています。守田氏は編集者として、同書の新訳(池田香代子訳、2002年)に関わりました。講演では、1956年にこの本を日本語で出すことを決意した翻訳者や出版者の想いへと注意を喚起しながら、日本のホロコースト受容の歴史について、重層的に語られました。当時の「出版の序」には、「人間であることを恥じずにはおられない二つの出来事」として、日本軍による南京事件とナチズムによる組織的集団虐殺が挙げられています。

守田氏の講演は、アウシュヴィッツやヒロシマといった出来事をめぐる書物や記憶の歴史だけでなく、ホロコーストや記憶といった言葉そのもののもつ時間性に、つまり言葉が受容され流通していく世界や社会の構図にも触れるものでした。教室ではなくラーニングコモンズのスペースで、同じ目線で聴いた講演の内容に、参加者たちは多くの刺激を受けたようです。たとえば、「アンネの日記」を中学生のときに読んだが、そうした自分の読書経験もある時代性を帯びているのだと気づいたというコメントもありました。本も翻訳も読書という行為も歴史のなかにあるという守田氏のご指摘は、パンデミック下の今の社会における言葉のあり方を考えることにつながるかもしれません。

国際交流学部国際交流学科教授 矢野久美子

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