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“よみもの”

20211206

英語「Learner」から「User」へ—フェリスの新英語インテンシブ・コースの特徴を紐解く

文学部 英語英米文学科 大畑甲太 教授

フェリス女学院大学では、2021年度から全学共通の語学教育プログラム「英語インテンシブ・コース」のカリキュラムを大きく改編。これまでの技能習得を中心とした内容から、より能動的・主体的に言語を習得するプログラムへの転換を目指しています。今回は、新コースの学びの内容と込められた想いについて、応用言語学・英語教育を専門とする大畑甲太教授にお話を伺いました。

英語の学習者(Learner)から使用者(User)への発想の転換

新カリキュラムのコンセプトは、「英語“Learner”から“User”へ」。中学校・高等学校まで取り組んできた「学習者(Learner)」としての英語から発想を転換し、英語「使用者(User)」としての意識を学生に持たせる教育を展開します。これは教員の立場から見ると、受動的な言語技能の習得に重点を置いていた従来の学びから脱し、言語を使うことを目的とした能動的・主体的な英語運用能力の養成に力を注ぐことを表しています。

スキル別科目から目的別科目への再編成

新コースの特徴の一つが、実践の場を見据えた科目編成です。これまではListening・Reading・Speaking・Writingなどのスキル別に科目を用意していましたが、今年度からはこれらを「発信・表現」「分析・理解」といった目的別科目として再構成。より実践の場で活かせる英語力を育てます。

授業は週2回、1クラス15名程度で実施。このクラスと「プロジェクト科目」(#03を参照)は同じ教員チームが担当するため、教員と学生との距離が近く、気軽に相談できる態勢を整えています。科目を担当する教員が学生一人ひとりのサポートまで担当できるのは、早くから少人数教育を貫いてきたフェリスならではの強みではないでしょうか。

学習の要となるプロジェクト科目で、英語力を鍛えながら課題解決力を養う

さまざまな科目の中でも、週1回実施されるプロジェクト科目は英語学習の柱となっています。学生は#02で説明した「発信・表現」「分析・理解」科目で各学期共通のテーマ(教育、環境、メディアなど)について理解を深め、得た知識を持ち寄ってプロジェクト科目に参加。各グループは協力してリサーチやフィールドワークを行い、学期末の発表会に臨みます。学びの主体はあくまで学生であり、教員はそのサポート役です。一連の自発的な学びを通じて、英語運用能力だけでなく、発信力や思考・分析力、情報収集力、企画・実行力といった、総合的なスキルが同時に養われることを目指します。

英語学習ポートフォリオの導入により、学びの振り返りと目標設定、学修成果の可視化を実現

さらに今年度からは、英語の学びに関する各学生の情報をまとめたデジタル・プラットフォームとして「英語学習ポートフォリオ」を導入。これにより、学生一人ひとりが自らの学びを振り返り、次の学習への目標設定を行いやすくします。また、さまざまな学びの成果を登録することで、成長を可視化することを可能に。教員にとっても、ポートフォリオの内容をもとに学生の情報を共有し、状況に応じた適切な指導ができるようになるなど、多くのメリットがあります。

英語選択科目(英語 e 科目)を再編し、学生の多様なニーズに応える

これまで英語選択科目(英語e科目)は、学術英語・検定試験対策を中心に構成されていました。それらの授業は継続しつつ、今後はさらに各学部・学科の専門科目につながるような選択科目群の導入を検討していきます。現時点で構想しているのは、芸術・音楽に関連する科目群、文化・文学科目群、基礎・文法科目群、さらに、将来のキャリアを見据えたキャリア・イングリッシュ科目群など。学生の興味・関心に応じて、多種多様な学びを提供します。

学生の自主的な学びを促す、充実したサポート体制を整備

パーソナルゾーンとパブリックゾーン、グループゾーン、相談窓口と4つのゾーンに分けられた言語センター

授業以外にも学生の自主的な学びを支援する仕組みを用意しています。2021年4月にリニューアルオープンした言語センターは、豊富な学習教材や設備を揃え、語学全般の学習をサポート。教員が個別に学生の相談に答える「語学学習カウンセリング」の時間も設け、検定試験対策や留学の準備など、さまざまな質問に対して指導・アドバイスを行っています。

【Column】

英語「を」 学ぶのではなく英語「で」学び、達成感や学習意欲を高めるカリキュラムを目指す

大畑教授が強調していたのは、英語学習そのものを目的とするのではなく、英語を使いながら情報収集やレポート、プレゼンテーション等の活動を行い、英語で学ぶ姿勢を身につけるのが大切であるということ。英語を使って成果物を作り出し、何かを成し遂げる経験は、達成感や自信を生み出し、さらには意欲の向上にもつながる。大畑教授は新しい「英語インテンシブ・コース」の履修によってこのような好循環を生み出したいと話す。近い将来、フェリスから多くの英語「User」が生まれることを期待したい。

取材・執筆 株式会社WAVE

取材対象者

大畑 甲太

大畑 甲太OHATA, Kota

文学部 教授

英語教授法・英語学(Composition & TESOL)博士。応用言語学・英語教育を専門とし、2016年度からフェリス女学院大学文学部の教授を務める。 特に関心のある研究テーマは、第二言語学習におけるさまざまな心の葛藤・不安といった学習者の心理的側面についての探究。

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