03special

“よみもの”

20210528

ジェンダー視点で法や政策を見直してみると…

国際交流学部 国際交流学科 山本千晶 准教授

「女性の人権」という言葉を聞いたことがありますか?なんだか変な日本語ですね。本来、 権には当然女性も含まれているはずなのに、なぜわざわざ「女性の」という言葉をつけて表現しなければならないのでしょうか。(“頭 痛い・・”と同じような違和感?)

ところで、高校までの間に、フランス人権宣言やアメリカ独立宣言について習いましたか?とくにフランス人権宣言は1789年という覚えやすい西暦なので記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。「人は、自由かつ権利において平等なものとして出生し、かつ生存する」と高らかに謳われています。しかし、この当時、女性には当然のように参政権がなかったことは、あまり教えられません。もし、この事実を知っていたなら、ここで謳われている「平等」の定義ってなんだろう、と疑問に思うチャンスだったかもしれません。

女性の歴史的な地位や現状に焦点を合わせると、「人権」や「平等」という(もしかして、アタリマエすぎてこれまで深く考えることもなかった)コトバをあらためて問い直すきっかけになります。このような従来の重要なコトバに対する女性の社会的地位や経験からの問い直しが、1960年代以降フェミニズムを中心になされてきました。たとえば、女性差別撤廃条約(1981年発効)には、女性を含む「平等」のあるべき姿が構想されています。このようなジェンダーの視点から再定義された平等や人権の理念に照らしながら、国内の法律や政策をあらためて見直してみましょう。評価できるところあるいは逆に不十分なところが見えてくるはずです。

私の専門はジェンダー法学やフェミニズム理論という分野です。私の授業では、法律や裁判事例、男女共同参画社会に関わる諸施策の一つ一つについて、ジェンダー視点、とりわけ国連を中心とする国際社会におけるジェンダー平等の理念に照らしながら分析を行い、問題や課題を検討しています。女性の経験やジェンダーに着目しながら分析を行うことで、これまで見えていなかった問題が見えてくるかもしれません。そして、ジェンダー平等な社会の実現のために必要な法律や制度について一緒に考えてみましょう。

(2021年5月28日)
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