01from ferris to you

“おたより”

20210525

フェリスはキリスト教主義の大学ですが、入学して初めてキリスト教に触れる人がほとんどではないでしょうか。ですからキリスト教という宗教の名前は知っていても、その教えについて知らない人が多いと思います。そして、キリスト教というと「愛の宗教」と呼ばれますが、そもそも「愛」とは何なのでしょうか。「愛」について学生の皆さんと考えるために、昨年度は宗教センター読書会をZoomで開催し、学ぶ機会をもちました。

取り上げた著作は、エーリッヒ・フロムの『愛するということ』です。エーリッヒ・フロムは、1900年生まれのユダヤ系ドイツ人で、ナチスが政権を取った1933年にアメリカに移住した社会心理学者です。彼はクリスチャンではありません。したがって、彼の思想が、キリスト教の「愛」理解そのものではないのですが、「愛」について考える際に、私が大きな影響を受けた著作なので、紹介しました。

『愛するということ』の原題は、“The Art of Loving”です。直訳すると『愛の技術』になります。「愛は技術である」というのがこの著作の主題です。愛が技術であるというのはどういうことでしょうか。私たちは、何の努力をしなくても愛することはできると考えています。しかし、フロムはハッキリとそれを否定します。彼は愛することを、“fall in”つまり、「一目惚れ」のように「落ちる」ことではなく、人間が知力と努力を駆使して、身に付けなければならないことだと捉えます。生まれながらにしてほんとうの意味で愛することができる人はいないのです。もし愛することに修練や訓練が必要なのであれば、愛は技術といわねばなりません。そして彼は、愛が技術であり、それが一番大切なものであると考えるならば、人生をかけてそれを学ばなければならないと説いています。

紙幅の関係で、これ以上詳しくご紹介できませんが、興味関心がある人はぜひ読んで欲しいと思います。私はこの著作によって、大きく考え方が変えられました。

大学に入学すると様々な分野の勉強をすると思いますが、「自分はどのように生きるべきか」、「ほんとうに幸せになるとはどういうことか」についても真剣に考えて欲しいと願っています。そのために、キリスト教諸科目やチャペルサービスは大きな意味をもつと考えます。なぜなら、キリスト教は2000年以上の昔から、救いとは何か、幸いとは何かについて考え抜いてきた宗教だからです。ただ単に必修単位を満たすためだけに勉強するのはもったいないです。

在学生向けには今年度もキリスト教や生き方に関連する著作を読む読書会を計画していますので、興味がある人はぜひ参加してください。

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