03special
“よみもの”
20210525
現在の私たちは、ヒト、モノ、カネ、情報が国境を越えて容易に移動する時代を生きています。このグローバリゼーションと呼ばれる現象によって、国際分業が進展し、格差や環境破壊といった地球規模の諸問題が生じています。
太古より人は移動し、それによって社会はつくりかえられてきました。ヨーロッパにおいては、大航海時代から人の移動が特に活発になり、これが現在につながる世界の一体化の始まりだと言われています。この時代の人の移動には、海の彼方に新天地を求めた探検・植民だけではなく、黒人奴隷の強いられた移動、貧困ゆえの農村から都市への移住、宗教的迫害による亡命などもあり、多くの人々が意に反して故郷を後にしました。
これらの移動する人々の受け皿となったのは、世界経済を中心的に担う港町です。身分階層、人種、宗教の異なる人々が流入した地では、社会が大きく動揺しました。それまでは、地域で富裕者が貧困者を救済する、というキリスト教のチャリティで人々が結びつき、共同体が成り立っていました。それゆえに、異質な人々によって人口が多様化すると、共同体を維持するために、「他者」を受け入れるのか、排除するのか、という難しい選択を迫られたのです。
フランスで起きた市民革命が出した答えは、身分階層、人種、宗教の違いを超えて、すべての個を「共和国」に結びつける、ということでした。しかし、異質な人々をひとつの理念で結びつける、というのは、そう容易なことではありません。近年のグローバリゼーションによる人の移動の増加によって、各地で不和が生じ、「他者」との共生がかつてなく重要な課題となっています。
人の移動が新しい文化を生んできたことも忘れてはなりません。ヨーロッパ文化は海を越えて広がり、世界の諸地域の文化と混ざり合っていきました。また、ヨーロッパには、コーヒー、紅茶、チョコレートなどが砂糖と共にもたらされました。しかし、これらの異国情緒あふれる嗜好品の流行に伴い、単一の農作物を栽培するようになった地域のなかには、環境破壊が進み、未だに貧困から抜け出せていないところもあります。
このように、現在の世界は人の移動と交流を通して形成されてきましたし、これからも社会は絶えず変化していくでしょう。過去に学び、未来の地球社会のあり方について、一緒に考えていきましょう。