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“おたより”

20190625

地下鉄サリン事件の真相理解につながる図書の紹介:コミュニケーション学科の授業との関係から

去る2019年3月に、オウム真理教による地下鉄サリン事件(1995年3月20日)の実行犯の一人であった広瀬健一さんによる手記『悔悟――オウム真理教元信徒広瀬健一の手記』が、朝日新聞出版より世に出されました。

コミュニケーション学科では、2008年度に「現代人と宗教」という授業を開講しました。本書の手記は、その授業で講師を務められた藤田庄市氏の求めにより執筆されたものがベースになっています。

手記には、カルト宗教の教義を盲目的に信じてしまった広瀬さんの悔恨の念と懺悔が刻印されています。しかし、それだけではなく、この手記には、「生きる意味」を求めてやまない、多くの若者が抱え持つ人生に対する煩悶や孤独に、カルト宗教がつけ入る様子や仕組みが彼の体験を通して記されています。

2018年7月6日、広瀬さんも含む地下鉄サリン事件の実行犯13人の死刑が執行されました。なぜこのような事件が起こってしまったのか、もはや加害者たちに質すことはできません。広瀬健一さんの手記は、被害者や遺族の方たちのみならず、今を生きる若者たちや研究者にとっても、事件の真相理解へとつながる貴重な資料になることと思われます。

文学部コミュニケーション学科教授 諸橋泰樹

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