01from ferris to you
“おたより”
20181217
コミュニケーション学科による、ゼミ別・卒業論文に関するレポート第三弾です。本日は、国際社会学を専門とする小ヶ谷千穂先生の多文化共生ゼミからです。
多文化共生・国際社会学ゼミの卒論テーマ
~「現場」から学び、「社会」について考える~
卒業論文は、4年間の大学生活の集大成なので、これまでゼミを通して勉強してきたことに基づいて、自分が心から打ち込めるテーマと対象を選ぶ、という点を私たちのゼミでは重視しています。最初は少々無謀に(!)思えるテーマであっても、じっくりと取り組んでもらっているため、オリジナルな調査研究を行う論文がこのゼミには多いと思います。
また、多文化共生に直接かかわるようなテーマを選ぶ学生と、広く社会学的なテーマを選ぶ学生との二通りの傾向もあるように思います。
私が担当するようになってからの過去4年間では、外国にルーツをもつ同世代の若者のライフストーリー・インタビューからアイデンティティの複数性について考察した論文、歌舞伎町でのフィールドワークから、なぜ歌舞伎町という「場」が、一般的には「生きづらい」とされるさまざまなマイノリティ(国籍、性的志向、職業など)の人たちにとっての「居場所」となっているのかを考察した論文、日本でのハラールフードの普及の現状について、東京都内のモスクに集まる人たちへの調査から明らかにした論文、などオリジナルな視点とフィールド調査にもとづく力作が生まれています。
タイムリーなテーマを取り上げる学生も少なくありません。例えば、多くの問題が指摘されている「技能実習生制度」について、実習生や管理団体で働く人たちにインタビューしながら、一般的に言われていることとは違う角度からこの制度の問題点を明らかにした論文や、オリンピックの「文化事業」としての側面について分析したもの、また今年はJリーグにおける人種差別問題について、クラブチームにインタビューに行った学生もいました。また毎年、自分自身の「地元」をフィールドにして、地域活性化の在り方や、地域における多文化共生について考察する学生もいます。
このように、多文化共生・国際社会学ゼミの卒業論文のテーマは、常に変化する社会や世界の動きに連動しながら、かつ、フィールド調査やインタビュー調査によって、「現場」や「当事者」の声から現実にアプローチしよう、という性格が強いようです。普段のゼミでも、文献の講読やディスカッションだけでなく、身近なフィールドに直接出かけていく(鶴見や伊勢佐木町、新大久保の街歩き、朝鮮学校の学園祭への参加、東京ジャーミィ(モスク)の見学など)という活動も重視していますので、そうしたことが、各自の卒業研究にも反映していると思います。
様々な社会的課題について、大上段に構えて論じるのではなく、実際にそこに生きる人々の「声」に耳を傾けることで新たな方向性を模索していくこと―これは、言ってみれば「社会学」の一つのあり方なのかもしれません。