02interview

“わたしたち”

20180117

「一瞬で一生ものの公演」を多くの人に届けたい

01

フェリスの演奏学科は少人数制のため、すべての学生にスポットライトがあたるという特色があります。在学中には、学内演奏会「室内楽の夕べ」「オーケストラ協演の夕べ」に出演し、日々の学びをお客様の前で披露する機会に多く恵まれました。その度、お客様からの拍手に背中を押され、等身大の音楽を多くの人の心に届けられる喜びを感じることができました。また、こうした経験がきっかけで、学内での学びをより多くのお客様に発信できる演奏機会を自発的に作ることに努めるようになりました。

学部2年次には、イギリスからの客員教授であるローナン・マギル先生の専攻実技特別レッスンの受講生に選抜された3名で、“2台のヴァイオリンとピアノのトリオ”を結成。学部3年次には、自らが発起人となりこのトリオのリサイタルを開催しました。この経験が、現在のキャリアにつながる大きなきっかけとなりました。

キャリアに繋がっているポイントは2つあります。1つは、リサイタル企画から開催に至るまで、オーガナイザーの立場から、会場決め、プログラム構成、入場料金設定、スタッフ総括に携わったことです。また、集客率を上げるため楽器店への宣伝活動や、オフィシャルホームページの作成、フライヤーの作成も行いました。これらの経験から「0から1を生み出す」プロモーションの面白さ、やりがいを実感するこができました。

2つ目は、「チームの力の凄みを体感したこと」です。“2台のヴァイオリンとピアノのトリオ”のリサイタルでは、沢山のお客様の拍手に包まれ、大成功のうちに幕を下ろすことができました。トリオの結成、そしてリサイタルを通して、一人では決して見ることのできなかった素晴らしい景色を見ることができました。またリサイタルを達成した3年次に、音楽学部の成績優秀者としてチームメンバーとともに奨学金生に選抜して頂くこともできました。一人きりで音楽と向き合っていたとしたら成し得ることのできなかった成果を得られたのは仲間とともに切磋琢磨した、かけがえのない時間があったからです。この経験から、「他者とともに人の心にアクションを起こしたい」という志を得ることができました。

02

こういったフェリスでの学びや経験を生かし、私は現在、「プロモーター」として音楽・演劇公演の企画・制作・宣伝・運営を行なっています。具体的な業務は、公演のプロモーション、広報活動、マーケティングのコンサルティングなどです。クラシック音楽のコンサート、オペラ、ブロードウェイミュージカル、演劇、歌舞伎など、あらゆるジャンルのライブエンタテインメントをプロモートしています。

プロモーターの仕事は、予定不調和がつきものです。そうした場面に遭遇したときに、学生時代に培った折衝力やバイタリティが生きていると感じます。

たとえば、大学3年次に、学部2年生から副手までのメンバーで結成した弦楽8重奏で学内オーディションにチャレンジした時のこと。オーディション前夜に、メンバーの体調不良が原因で、出場棄権を余儀なくされる危機に遭遇しました。周囲の誰しもが「諦めなさい」と諭す中、私は必死に代奏者を探し、代奏者が見つかった時には、すっかり夜が更けていました。眠れぬ夜は明け、オーディションを迎えました。幸い、メンバーの体調は翌朝までに回復して、代奏者の出番はありませんでした。そして、オーディションを1位で通過するという栄冠に輝きました。この経験がアドヴァンテージとなり、現在の仕事をする中で、大きな壁が立ちはだかっても、「不可能は可能にできる!必ず乗り越えられる!」と信じることができています。

03

今後は2つ、目標があります。1つ目の目標は、プロモーターとして「一瞬で一生ものの公演」を1人でも多くの人に届けることです。具体的には、「記憶に残る音楽を発信し続ける」というビジョンがあります。人工知能で小説が書ける時代となりましたが、そんな時代だからこそ、技術の進歩が及ばない人間の能力を見つめ直し、人の手を温める温もりに似た「機械熱ではなく体温を伝える音色」をお客様に伝えていきたいと思います。

2つ目は、ヴァイオリニストとして「人の心を動かす演奏者になる」という目標です。私は、自分の表現を“他者へ伝える”という目的を持ち、学生時代からリサイタルの開催をはじめとする演奏活動に精力的に取り組んできました。今後は、プロモーターのノウハウを体得し、将来的には自分自身をヴァイオリニストとしてセルフプロモーションしたいというビジョンがあります。フェリスで培った発信力と行動力を発揮して、音楽をひとりでも多くの人の心に伝えるヴァイオリニストを目指したいと思っています。

学内演奏会の様子

自らが発起人となったリサイタル

(2018.1.17)
scroll to top