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“よみもの”

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映像・舞台音楽論:「どんな音楽が、どんな風に使われているか」

音楽学部 音楽芸術学科 谷口昭弘 教授

私が今年度担当している「映画・舞台音楽論」では、ディズニー映画に使われている音楽について学生の皆さんと一緒に学んでいます。この8月に『ディズニー・ミュージック:ディズニー映画 音楽の秘密』という本を出版したばかりで、この本も教科書として使っています。

映画というと身近なエンターテイメントですが、その中で使われている音楽が果たす役割にはとても大きなものがあります。ディズニー映画であればなおさらで、主題歌や挿入歌は「ディズニー・ソング」として、映画から離れたところでも、幅広い世代に親しまれています。

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もちろん講義では、それらの歌の内容について簡単に説明します。歌がどのように映画の物語に貢献しているか、どうしてその歌が必要なのかを、実際の映画の文脈の中で考えることはとても大切です。主人公の望みを高らかに歌う曲もあるでしょう。人生を変えるような人との出会いがあって、その感動を表現する歌もあるでしょう。親子の愛情を伝える歌もあるでしょう。一つ一つの歌を映像とともに考えることがとても大切です。

歌以外にも、映画には背後で鳴っているオーケストラの音楽があります。専門用語ではアンダースコアあるいは短くスコアと言いますが、セリフや効果音の下(アンダー)に流れているインストゥルメンタル・ナンバーがこれです。

こういった音楽は、意識的にセリフの邪魔をしないように音量も抑えてあったりするため、注意深く聴かないと分からないですし、ただぼんやり映画を観るだけでは全く気にもとめないでしょう。そういう風に観客の気を引き過ぎないようにすることも、スコアの大切な要素です。

しかし、こういった背後に流れている音楽は、単に映画をうしろからサポートするだけでなく、映画に登場する登場人物に私たちが感情移入できるように導いてくれたり、アクションシーンでは、あえて「癒やし」の音楽とは反対方向の、緊張する和音、心臓をドキドキさせるリズムが登場していたりします。

授業では、映画の作品の中でスコアが重要な役割を果たしているところに注目し、どんな旋律や和音が使われているのかを検証します。特にディズニー映画の場合には、主題歌や挿入歌のメロディーがこういったスコアの旋律として使われている箇所があり、歌の意味を知っておくと、背後になっている音楽の意味も分かり、アニメーションの作り手たちが、そういった、よっぽど注意して聴かなければ分からないような音楽にも細心の注意を払っていることが分かると思います。

そういった音楽を通して映画を検証してみると、ディズニーに限らず映画作品そのものの理解も深まり、新しい発見があることでしょう。たくさんの学生のみなさんと、楽しみながら学びましょう。

(2016年10月26日)
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