03special

“よみもの”

20151220

南アジアの経済:「実態を知り、開発を考える」

国際交流学部 国際交流学科 木曽順子 教授

いたるところ渋滞! (バングラデシュのダッカ)

「南アジアってどこなのだろう」と思ったかもしれませんね。南アジアとは、一般的にインド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、モルディブ、ブータン、ネパールの7カ国をさします。ご存じの国名が多かったのではないですか。ネパールといえばエベレストや段々畑、モルディブといえば美しい海に浮かぶ島嶼国、またインドというと、非暴力運動をリードしたガンディーや聖なる河ガンジスなどが思い浮かぶのでしょうか。いえ、インドだと最近はIT(情報技術)、唄い踊る映画、増えてきたインド料理店、カラフルな雑貨などの方が皆さんには身近かもしれません。インド=「貧しい」というイメージばかりが強かった時代を思うと、まさに隔世の感があります。

いたるところ渋滞!(バングラデシュのダッカ)

いたるところ渋滞!(バングラデシュのダッカ)

さて、私の専門は開発経済学ですが、「南アジアの経済」の講義では、南アジアの具体的な社会経済開発過程を取り上げることで、途上国の開発と貧困・豊かさについて理解を深めてほしいと考えています。私の専門地域はとくにバングラデシュとインドですから、授業ではこの2つの国を取り上げます。

バングラデシュは1971年に独立を達成したまだ若い国。国土面積は日本の4割ですが、人口は今や日本のおよそ1.2倍に達し、多くがイスラーム教徒です。独立当初、貧困率は推定72%、乳幼児の4人に1人が5歳未満で亡くなり、識字率はおよそ20%という状態でした。しかし現在、それらの数値は飛躍的に改善しています。いかなる開発政策をとり、開発資金をどう工面し、NGOがそれにどう関わり、経済グローバル化にどのように臨み、人びとがいかにチャンスを活かしてその状態に到達できたのか、開発の実態を検討します。他方、インドは、広大な国土と12億超の人口、多様な言語、ヒンドゥー教など多様な宗教をもつ大国です。1990年代以降、とくに2000年代には高い経済成長率で注目されてきましたが、貧困問題はまだまだ深刻です。講義後半では、この重層的で複雑な社会経済構造をもつインドの開発の歴史、経済成長と貧困緩和の実態を取り上げます。ITの国インドというイメージに至るまでに、インドはどのような開発政策をとり、政治・社会変動を経てきたのかを学んでください。実態を知り、感じ、考えることは、「発展」への道筋を論理的に考える力にきっとつながります。

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