03special
“よみもの”
20151219
国際開発協力について多角的な見方で研究
現在の国際開発協力について、政府や国際機関、NGOや市民社会組織など多様なアクターの役割をふまえつつ研究しているのが高柳先生のゼミです。
「『国際開発』と一言で言ってもさまざまなアプローチがあります。例えば、かつては『開発』とは経済成長や工業化とイコールで考えられていましたが、今は人間を中心に据え、人権や環境も考慮した多様な視点から『開発』は考えられています。私のゼミでは、世界の貧困と開発の問題について、国や国際機関、それにNGO(非政府組織)や市民社会がどのような支援活動を行っているのかを研究しています」と高柳先生。
ゼミでは国際開発協力の現状と、現場で起こるさまざまな問題について考察しています。
「これまではカナダの事例を中心に、NGOが政府から資金を得ることと、NGOの市民社会の組織としての独自性を持つことをどう両立させていこうとするのかを考察してきました。また近年国際的に議論されている『援助効果』におけるNGOの役割にも注目しています」
実際の現場で「自分だったらどうするか?」を考える
「ODAプロジェクトやNGOの活動の中で起こった事例を使い、固有名詞については架空のものに変えて、現場で発生するさまざまな問題を具体的に考えます。また、例えば、世界の食料問題を扱った章を読んだ後、著者が示した政策について、ODAやNGOの事業でどんなことができるのか、グループでまとめ、その後議論をすることもあります。こうした活発なディスカッションを通じて、自分の関心がどこにあるのか、改めて気づき、卒論のテーマを決定する学生もいます」
高柳ゼミの卒論のテーマは、国際開発や関連する人権、ジェンダー問題、地球環境などさまざま。
「教育・保健などの諸課題の多様な方法論や国際的な政策の変化と試行錯誤の現実を学ぶことで『開発』とは何か、を深めます」(高柳先生)
地球規模で物事を考えるために必要なこと
「『援助効果』とは、援助国の援助のあり方を効果的にするための国際約束。開発途上国の考えた開発計画を尊重し、援助国が調整・協力して成果が出るよう運営していこうというものです。NGOは国際的なネットワークを作り、同時に活動の効果を高めるための規範づくりに取り組んだ点で注目されています」
高柳先生は、地球規模での問題を考えると同時に、国内への問題へも関心を向けることでまた新しいアプローチが見えてくることもあると言います。
「身近なところでもそうですが『自分さえよければいい』『自分の国さえよければいい』と考えてしまう傾向が高まっているのは事実です。しかし『国際開発』とは相手の国の人たちの主体性のことを一番に考えて行うものです。その一方で、日本の多くの地域の過疎化や国内の格差の拡大と世界の格差の問題に何か共通の根源がないのか考えることも重要です」
受験生の皆様へ
身近な疑問との関係性も探っていける高柳ゼミ
「国際開発協力のみならず、国際関係を大学で学びたいと思っている学生には、おすすめのゼミです。そして、地球的な視野で物事を考える学生に来てほしいですね」と高柳先生。
「近年は、日本も含め世界の多くの地域で視野の狭い自国中心主義、自民族中心主義などさまざまな原理主義が事実として高まっています。日本でも政府開発援助をもっと狭い意味、もっと短期的な『国益』に結びつけるべきだという議論がされています」
だからこそ国家と国家の問題だけとして捉えずに、国際機関やNGOなど多様なアクターの役割に注目することも大切だと言います。
「地球規模の諸問題を考える中で日本の問題も考えること、例えば地球規模での格差拡大と、日本国内の格差拡大は同じ根源があるのではといった疑問を持ってほしい。そして人権やジェンダー平等といって普遍的価値を大切にしながら国際協力について、一緒に理解を深めていきましょう」