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“よみもの”

20151219

身近な言葉が研究テーマに

文学部 日本語日本文学科 勝田耕起 教授

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1000年前の古い日本語から現代の日常会話まであらゆる日本語が研究対象

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日本語そのものについて研究しているのが勝田先生のゼミです。『枕草子』『徒然草』など古典の言葉から近所のコンビニの店員さんの言葉まで、あらゆる日本語をターゲットにしています。自分の出身地の方言を卒業論文のテーマにする人も毎年います。

「まずは、身の回りに無数に存在する言葉を、意識して〈観察〉してみましょう。その中で『これは…?』と気にかかる言葉を見つけたら、次はその日本語にどういう角度から光を当てれば知りたいことがより鮮明になるのか、考えます。例えば、ケーキ屋さんに
『洋梨のタルト、あります』
とお知らせが出たとします。『洋梨』と言うか『ラフランス』と言うか、は語彙の問題。『洋梨』『洋ナシ』『洋なし』は文字表記の問題、『タルトあります』『タルトあります』と助詞を入れるとおかしくなってしまう、というのは文法の問題。といった具合です。さまざまなバリエーションの中から一つの形が選ばれているわけで、その選択にある論理、隠れた運用規則を見出していくのが日本語研究です」と勝田先生。

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辞書は正しくないかも?

「ことばを調べる」という場合に、まず思いつくのは辞書です。国語辞典や古語辞典に書いてあることは信用するのが普通ですが、ゼミ生は「研究発表では、辞書の記述の検討よりも、調査対象にした言葉にどういう使用例があって、生きた文脈の中でどういう意味を担い、どういう語感をまとっているか、一つひとつ丁寧に読み込むことに力をそそぎます。そうしてみんなで意味を探っていくと、辞書の語釈は不十分に思えてきます」と話してくれました

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「複数の辞書を引き比べしてみるとわかりますが、書いてあることが違うことはよくあります。例えば、アタタカイの語義を“気候や温度が程よい”としか書かないものもあります。“程よい”だけではhot方向なのかcold方向なのか、分かりませんよね。辞書の記述を把握するのは基礎的な準備作業であって、それにとらわれずに自分の頭で整理すると、思わぬ発見につながりますよ」(勝田先生)

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自分の興味を追究するから研究も楽しい!

勝田ゼミでは、3年次に「日本の漢字と国語辞書」「日本語の文体と語法」という専門科目の履修と研究発表が課せられます。一つの文学作品をテキストとし、受講生には1~2ページの担当範囲が割りあてられます。語学的なアプローチをする、ということだけが条件なので、単語の意味、珍しい漢字表記、現代とは違う助詞の用法、など学生は自分の担当範囲内で問題点を発掘します。

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「4年生になる前に徹底的に実証性や客観性への認識を高め、自立的研究能力を鍛えます。卒業論文の研究テーマを自力で探し出すことは、与えられたテーマで上手なレポートを書くことよりもずっと大切なことだと思います。だから私は学生一人ひとりが日本語のどういうところに興味を持っているのかを最大限尊重し、『なるべく私が口出しをしないこと』をゼミの時間は心がけています」と勝田先生。

ゼミ生は、文献資料による歴史的研究、現代の若者ことばや女性ファッション誌にみえる表現の研究、方言のフィールドワークなど、自分の性格に合った、本当に「楽しい」と思えるテーマと方法を選び、4年間の集大成である卒業論文を作成します。

 

受験生の皆様へ

日常生活には日本語学につながるヒントがたくさん!

「国語」という科目の学習内容と、受験とは直接関係ないような、趣味的とも言える関連情報のすべてが、日本語日本文学科に入学すれば意味のある知識となります。お得感がありますよね。

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特に、高校の授業での「ことば」に関する知識は全て、大学で日本語学を研究する糧となります。単語の意味や文法はもちろん、漢字の読み書きだって立派な研究テーマになります。国語以外では、例えば英単語の発音記号。キャットの[æ]などは日本語の方言音声の記述に使われますし、want[wɔnt]の[ɔ:半広母音]は室町時代に存在した音でした。これと[o:半狭母音]との違いは日本語の歴史としては不可欠の知識となります。また、日本史の資料(古文書)に使われている、見慣れない漢字表記や用語なども、その時代の言語の問題として扱うことが可能です。だから、皆さんの日常生活には、授業中にも放課後にも、日本語学につながるヒントがたくさん散らばっていると思ってください。

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