03special
“よみもの”
20151219
第二次世界大戦敗戦直後に男女差別禁止の規定が日本国憲法に盛り込まれるなどし、その後男女平等は飛躍的に前進しました。とはいえ、男女差別の制度・慣習・意識はなくなったのでしょうか。恐らく、現在の日本に男女差別はほとんどないと思っている人が多いのではないでしょうか。
しかし例えば、夫や元夫などの親密な関係の人からの暴力であるDV(ドメスティック・バイオレンス)からは、男女平等とは言えない状況にあることが見えてきます。
「DV防止法」が2001年10月に施行されるまでは、夫婦間の暴力は「夫婦喧嘩」と見なされ、命の危険を感じた妻が血を流しながらいくら助けて欲しいと言っても、警察は何も対処してくれませんでした。その後、DVは身体的暴力だけでなく、精神的(言葉による)・経済的・性的な暴力も含めて、法律で取り締まられるようになりました。現在では、異性間だけでなく、同性愛カップルでもDVと認定されるようになっています。そして、学歴や収入の多寡に無関係に、6~8人に一人の女性がDVを受けており、DV被害者の90%以上が女性です。「DV防止法」の対象外にされていますが、未婚で付き合っているカップル間の暴力を「デートDV」といいます。その女性の被害の割合も、DVと同様であると言われています。
DV被害者の女性たちは、時に優しくなる彼を「自分を愛してくれている本当の姿だ」と思い込もうとしたり、親族に相談しても「お前が我慢すればまるく収まる」と言われて我慢するしかないと思ったりして、彼によるパワーコントロールの手中からなかなか脱することができないでいます。
自分さえ我慢すれば家族が幸せでいられると思い込み、その暴力場面を恒常的に見せられている我が子の不幸に気づかないでいる女性、職場などでのストレスを妻への暴力で解消するしかない男性。このような息苦しい状況を男女平等な社会と言えるでしょうか。
実は、国ごとに男女差別状況を数値で示すジェンダー・ギャップ指数に関して、日本は2011年の98位、2012年の101位、そして2013年の105位/136カ国と、順位を下げ続けています(表1参照)。男女の賃金格差の大きさ、企業での管理職や国会議員に占める女性の少なさなどがその低さの原因です。男女平等については、世界の中で日本は大いに後進国であるといえます。
表1 ジェンダー・ギャップ指数の順位(2013年、136ヶ国中)
2013年 | 国名 | 2012年 |
1 | アイスランド | 1 |
2 | フィンランド | 2 |
3 | ノルウェー | 3 |
4 | スウェーデン | 4 |
5 | フィリピン | 8 |
6 | アイルランド | 5 |
7 | ニュージーランド | 6 |
8 | デンマーク | 7 |
9 | スイス | 10 |
10 | ニカラグア | 9 |
11 | ベルギー | 12 |
12 | ラトビア | 15 |
13 | オランダ | 11 |
14 | ドイツ | 13 |
15 | キューバ | 19 |
16 | レソト | 14 |
17 | 南アフリカ共和国 | 16 |
18 | イギリス | 18 |
19 | オーストリア | 20 |
20 | カナダ | 21 |
21 | ルクセンブルク | 17 |
22 | ブルンジ | 24 |
23 | アメリカ | 22 |
2013年 | 国名 | 2012年 |
98 | モーリシャス | 98 |
99 | アゼルバイジャン | 99 |
100 | カメルーン | 112 |
101 | インド | 105 |
102 | マレーシア | 100 |
103 | ブルキナファソ | 104 |
104 | カンボジア | 103 |
105 | 日本 | 101 |
106 | ナイジェリア | 110 |
107 | ベリーズ | 102 |
108 | アルバニア | 91 |
109 | アラブ首長国連邦 | 107 |
110 | スリナム | 106 |
111 | 韓国 | 108 |
112 | バーレーン | 111 |
113 | ザンビア | 114 |
114 | グアテマラ | 116 |
115 | カタール | 115 |
116 | クウェート | 109 |
117 | フィジー | 113 |
118 | エチオピア | 118 |
119 | ヨルダン | 121 |
120 | トルコ | 124 |
また性教育に関しても、ヨーロッパ諸国だけでなく、同じアジアにある韓国や中国よりも、日本は遅れています。
私は大学生の頃にジェンダー問題を学ぶ中で、女性も男性も当たり前に就労し、(日没前の)午後2~3時頃に帰宅して保育園や学校から帰った子どもたちとひと遊びし、それから夕食作りを家族一緒にできるような社会にしたいと思うようになりました。それから既に30年以上経ちましたが、日本ではまだ実現せず、逆に遠のいています。しかし、ヨーロッパでは、家族政策が充実しており、働く女性が多いほど出生率が上がっています。女性も男性も多様な性の人も一人ひとりが、自らの心と身体、そして人生の主人公となることのできる社会、どのような人生を選択しても幸福になれる社会を一日でも早く実現させたい。