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“おたより”

20150318

教職員の「おすすめの一品」コーナー No.1

テネシー州メンフィスの裁判所

このコーナーでは、教職員のおすすめの書籍や映画、音楽などを紹介していきます。
第1回目は、国際交流学部の荒井先生です。

映画『レインメーカー』(The Rainmaker)
(原作:ジョン・グリシャム『原告側弁護人 上・下』(新潮文庫))
監督:フランシス・フォード・コッポラ

皆さんは「リーガルサスペンス」という映画のジャンルを知っているでしょうか。あまり聞き慣れない言葉ですが、簡単に言うと「法廷サスペンス」です。このジャンルの作品は、邦画ではあまりありませんが、アメリカ映画には珠玉の作品が数多くあるのです。
私は外国の司法制度や法律家論を授業で教えているため、この種の映画をたくさん見てきました。その中でも『レインメーカー』はとくにおすすめです。ちなみに、「レインメーカー」とは「雨降らし」という意味です。雨は作物を実らせますが、雨が降るように大金を稼ぐ弁護士がレインメーカーなのです。

舞台はアメリカのテネシー州メンフィス。ロースクールを卒業したばかりの主人公ルーディ(マット・デーモン)は、雇ってくれる法律事務所を探すのですが、弁護士が余っているため就職先がなかなか見つかりません。やむを得ず悪徳弁護士事務所に雇ってもらうのですが、そこで弱者を食い物にする悪徳保険会社を訴えることになります。
ネタバレをするといけないので詳しい紹介はしませんが、この映画はアメリカの弁護士や法廷の姿をありありと伝えてくれます。(ただし、弁護士の描き方があまりにステレオタイプではありますが。)
例えば、先程述べたように、アメリカでは弁護士が余っています。2014年時点でアメリカには128万人の弁護士がいます。日本では現在、3万6千人程度ですから、いかに多いかが分かります。

 テネシー州メンフィスの裁判所

テネシー州メンフィスの裁判所

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弁護士が余っているので、仕事にあぶれるものも少なくありません。そこで、事故に遭った人に「賠償金が取れる」と近づき、仕事漁りをしたりもします。こういう弁護士を「アンビュランス・チェイサー(救急車の追っかけ)」と呼ぶのですが、こういう手法を教えてくれるのが主人公の相棒デック(ダニー・デビート)です。

このデックですが、司法試験になんと6回も落ちています。アメリカの司法試験は州単位で行われるのですが、実はそんなに難しくないのです。合格率はだいたい70-80%です。難しいと言われるニューヨーク州などでも50%程度は合格します。だから、6回も落ちるというのは法的才能がないということなのですが、このデックが裁判実務で大活躍するところがこの映画の面白いところでもあります。
陪審裁判、弁護士の成功報酬制度、懲罰的損害賠償、証言録取手続(デポジション)などのアメリカの訴訟制度に不可欠の要素もふんだんに盛り込まれています。
しかし、小難しい映画ではありません。駆け出し弁護士と一市民が巨悪を倒すという小気味よいストーリーです。ロマンスあり、スリルありでエンターテインメント性抜群です。
最近では、エアバッグ製造会社のタカタがアメリカやカナダで集団訴訟を起こされていますが、映画を見てアメリカの裁判に興味をもったら、そのような訴訟社会の是非についても考えてみて下さい。

国際交流学部国際交流学科 荒井真

荒井先生の紹介についてはこちら

 

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