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“おたより”

20141208

『名誉革命とイギリス文学--新しい言説空間の誕生』を出版

英語英米文学科の冨樫です。このブログでは初めまして。

唐突ですが、ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』はご存知ですよね? ジョナサン・スウィフトの『ガリヴァー旅行記』も知ってますよね? どちらも18世紀に書かれたイギリス小説の古典で、日本語訳もたくさんあります。こども向けに、児童文学やマンガに書き換えられてもいます。

でもデフォーやスウィフトは、もとから小説家だったわけではありません。デフォーはもともと政治を扱う評論家・詩人で、『ロビンソン・クルーソー』を出版したのは50代後半になってからでした。スウィフトも本職は政治評論家・新聞書き(そして聖職者)で、同じく50代後半になってから『ガリヴァー』を出版しました。ある意味で『ロビンソン・クルーソー』や『ガリヴァー』は、つまりイギリスの近代小説は、政治的・社会的な環境や経験、発想や論理から生まれた、といえます。

では、具体的にどんな政治的環境や経験、発想や論理から?

・・・・・・ということで、私事で恐縮ですが、近刊の紹介です。17世紀から18世紀にかけて、内乱(いわゆる「清教徒革命」)の頃からデフォー、スウィフトの頃までの政治および文学の変遷についてまとめた編著『名誉革命とイギリス文学--新しい言説空間の誕生』(春風社)を最近出版しました。こんな表紙の本です。

ごめんなさい。嘘です。これは私がつくり、残念ながらボツになった幻の表紙案です。17世紀イギリスの出版物風につくってみたのです。本当の表紙はこちら・・・

ごめんなさい。また嘘をついてしまいました。40過ぎなのに。これもボツになった幻の表紙案その2です。

さて、もうネタはありません。本物の表紙はこちらです。

名誉革命は世界史で習っていますよね? 1688-89年のイギリスで、国王ジェイムズ二世が追い出され、オランダのオレンジ公ウィリアムとその妻でジェイムズの娘だったメアリが王・女王になったという、あの事件です。戦い・陰謀に頼らずして悪しき支配者を追放し、善良な支配者の統治を実現した画期的なできごととして、これは「名誉」革命と呼ばれてきました。でも、これがフィクションだとしたら--つまり、「名誉」ある、清く正しいかたちでなされた政権交代、というのは政治的な建前、ただのつくり話で、本当はその裏に、芳しからぬ利害の錯綜があったとしたら--どうでしょう?

このような政治的なフィクションと、文学上のフィクションづくりが重なったところに、デフォーたちの小説が生まれたのでは、というのがこの本の主旨です。

執筆者は、坂下史、佐々木和貴、曽村充利、武田将明、冨樫剛(私)、中島渉、西山徹、の7名です(五十音順)。みなふつうの研究者・大学教員ですが、たとえば、武田さんは某有名文芸雑誌に評論を連載していたり、曽村さんは某大学陸上部の部長として正月名物の某駅伝大会に関係していたり、佐々木さんは東北の某ラジオ局でパーソナリティをしていたり、などとなかなかご活躍の方々です。

ということで、よろしければ『名誉革命とイギリス文学--新しい言説空間の誕生』を書店・図書館などでお手にとっていただければ幸いです。文学・歴史系の学術研究にできること、それがすべきことは、まだまだたくさんあるのです。

文学部英語英米文学科 冨樫剛

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